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◆一般的な会計の本ではなく、経営を俯瞰して重要な示唆を与えてくれる著書
公認会計士として監査に従事していると実に様々な業種・業態の会社の数字を見ることになります。
創業が100年以上を超える企業もある一方で、残念ながら業績不振に陥り民事再生法や会社更生法の適用を受け再出発となる企業も存在します。
創業が100年を超えてなお、継続的に成長し続ける企業とそうでない企業の違いは、どこにあるのかを考えながら実務に従事していると、2つほど重要な特徴があるように思えます。
①販売力が強いこと
②目先の利益を追うのではなく、資金が残ることを重視する(キャッシュ・フロー経営)
①販売力が強いことについて
現在の高いマーケットシェアを誇っている企業について同業他社の方からお話を聞くと、昔は技術力ではうちの会社の方が圧倒的に高かったのに…というお話を聞くことがあります。
高いマーケットシャアを獲得するに至った要因を分析すると、技術力の差ではなく、販売力の差に起因することがよくあります。
究極のところ売上があがらなければ、仕入や製造もできなくなり、将来に向けての投資である研究開発にも資金を振りむけることができなくなります。
性能や機能だけでは売上をあげることは難しく、売上をあげるにはいかにマーケット(消費者)と向き合えるか、マーケットに自社の製品を届ける力である販売力が重要になります。
組織としても、営業部門やプロモーションに従事している方をリスペクトしているか、販売の難しさや重要性を、全ての従業員が理解しているか重要なポイントになります。
営業組織は即席で構築することはできず、構築には時間がかかります。
また、ある研究者の方が、人事ローテーションで営業を経験したことが、結果的に本来業務である研究開発活動にプラスの影響を与えた事例は多く存在します。
その点を理解したうえで、人事ローテーションを組めているかも重要な要素となります。
②目先の利益を追うのではなく、資金が残ることを重視する(キャッシュ・フロー経営)について
会計上の利益=資金の獲得量と思わる方も以外に多くいらっしゃいます。
ただ、現在の会計は、発生主義会計が前提となっているため、たとえ会計基準上妥当な処理であっても、決算日では、資金が伴っていない場合も存在します。
現に、「損益計算書」の営業利益はプラスなのに、「キャッシュ・フロー計算書」の営業キャッシュ・フローはマイナスになっている例も存在します。
創業から何十年も事業を行っている経理の方と話していると、資金が出ていく(キャッシュ・アウト)取引を非常に注視していると感じることがよくあります。
特に確実なキャッシュ・アウトを伴う税金に関しては、非常に関心が高い傾向にあるように思えます。
俗にいう、金庫番としての役割をしっかりと財務・経理が果たしていえる状況があてはまります。
著者の金児先生は、信越化学工業のCFOを務められた方で長年にわたり財務・経理畑を歩まれた方になります。
著書に書に記載されていることは、会社の経営にあたり重要なエッセンスが多く記載されています。
サブタイトルは、特に重要なエッセンスが凝縮されていますので一読されることをお勧めします。
◆内容(「BOOK」データベースより)
強い会社には理由がある―信越化学工業の高収益の秘密は、全社員の「1円の利益」を大切にする心にある。難しい理屈は一切不要。同社で経理・財務一筋38年、まさに「会計マインド」の権化とも言えるカネコ先生が集中講義。
◆目次(「BOOK」データベースより)
プロローグ 経営力の差は「会計マインド」「経理・財務マインド」に表れる
第1章 あなたは会社等にとって「コスト」である
第2章 「必要な無駄」が見えなければ「利益力」は上がらない―全社員・全店員の心得
第3章 「受注」と「入金」こそ最大の仕事である―販売・営業の心得
第4章 原料と設備を一円でも安く―製造・生産の心得
第5章 原価が見えていなければならない―研究・開発の心得
第6章 常に比例費・固定費と費用対効果を考える―広報・宣伝・IRの心得
第7章 最も「新しい利益」を生むところである―人事・総務の心得
第8章 最も「無駄なコスト」が多いところである―役員・経営幹部の心得
第9章 死んでも会社等の財産は守るべし―経理・財務&CFO・CIOの心得
終章 数字を社内共通語にできる会社等が勝ち残る―全社員・全店員の心得
◆著者プロフィール
著者:金児昭(かねこ・あきら)
日本の実業家。
信越化学工業の最高財務責任者(CFO)。
東京都出身。
東京大学農学部農業経済学を卒業し、信越化学工業に入社。経理・財務畑でキャリアを重ね、常務取締役(経理・財務・法務・資材担当)を務めた。
そのほか、早稲田大学商学研究科客員教授、日本CFO(最高経理・財務責任者)協会最高顧問、公認会計士試験(筆記・口述)試験委員、金融監督庁(現・金融庁)顧問などを務め、実体験をベースにしたビジネスマン向けのわかりやすい会計本を多数執筆している。